4.21.2013

The Future of Computer Shogi

コンピュータ将棋の未来

2013年4月20日、現役プロ棋士とコンピュータ将棋ソフトの対局イベント「第2回将棋電王戦」の第5局が行われ、
三浦弘行 八段 が GPS将棋(東京大学大学院 Game Programming Seminar) に敗北した。

GPS将棋開発者の談話にもあるように、たった一度の勝敗で優劣を結論づけることはできないが
一つのマイルストーンとして重要な意味を持つ日となったことに異論はないだろう。

2005年(もう8年も経ってしまった)に発行された書籍に「コンピュータが勝ったあとの心構え」が書かれているので
読み返してみる。
Amazon.co.jp: アマトップクラスに迫る―コンピュータ将棋の進歩〈5〉: 松原 仁: 本 

 

コンピュータがプロに勝つということの定義

「プロに勝つ」という言葉は曖昧なので、まずはその条件を固定化しなければあまり意味がない。

  • 勝つ回数
    1回勝つのと多数回では意味が違う。
    多くの対局を重ねた上で、どの程度の勝率を得られるか。
    コンピュータオセロは何回やってもコンピュータが勝つという状態に既になっている。 
     
  • プロのレベル
    平均的プロと順位戦Aクラスの間、Aクラスと最強の間には大きなレベル差がある。
    つまり、羽生三冠や渡辺竜王は、三浦八段よりも果てしなく遥かな高みにいるということだ。 
     
  • 対局条件 
    • 持ち時間
      一般に、持ち時間が短いほどコンピュータが有利だと言われている。
      名人戦と同じレギュレーション(9時間, 2日制)だった場合にどうなるのか。 
    • 心理的要因
      たとえば、観客がいると人間にはプレッシャーになる。
      今回のような生中継であれば尚更だろう。
      体調やバイオリズムの問題もある。
      コンピュータにはそんなものを感じる仕組みはない。 
       
  • 人間プレイヤの対策
    人間が前もって対策を講じているかが最も重要なファクターとのこと。
    コンピュータのコードや特性を体系的に研究すれば効果は大きい。

「数回以下の対戦で、特にコンピュータ将棋を研究していない平均的プロとの戦いで、
持ち時間25分切れ負けで互角に戦う」レベルは2年半後に達成されるだろう

この本が発行された2005年の2年半後なので、既に過去となり、この予測は現実となった。

しかし、「多数回の対戦で、コンピュータ将棋を体系的に研究している名人との戦いで、
名人戦と同じ持ち時間で、コンピュータが勝ち越す」のはさらに数年後のことだろう

と予測している。
棋士の間でソースコード読書会が行われる光景が目に浮かぶ。

 

コンピュータが勝ったあとの心構え

しばらくするとどうやってもコンピュータ将棋に人間プレイヤが勝てないようになる。これは必然である。

オセロは既にこうなった。チェス・将棋も時間の問題である。
囲碁はもっと先の話であろうが、その日は必ずやってくる。

人間同士の対戦こそ将棋文化の中心であることを忘れてはならない

やはり人間の尊厳の問題。
ひとたび人間が負ければマスコミは大きく取り上げるだろうが、それに踊らされないようにと警鐘を鳴らしている。

コンピュータ将棋はあくまでも将棋文化のそれほど大きくない一部であって、中心であるべきではない。

 

勝敗に一喜一憂したり、プロの指し手に感動したりする気持ちは持ち続けてほしいと切に願う。 

 

一方、これは私の直感であるがコンピュータ将棋にはまだまだ改善の余地があると思うし
おそらくあと数回、Bonanza の登場・オープンソース化のような大きなイノベーションが起こる気がする。

最終的には将棋を解くこと(先手勝ちかどうかを結論づけること)も決して不可能ではないと信じている。

そうなれば、そのアルゴリズムは様々な分野へ応用されていくに違いない。

(ただし、アルゴリズムが人間に牙を剝く未来がくることを忘れてはならない
  ケヴィン・スラヴィン 「アルゴリズムが形作る世界」 | Video on TED.com

 

何はともあれ、5月3〜5日に開催される第23回 世界コンピュータ将棋選手権がますます楽しみになった。

  

References 

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